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形見屋の事件簿

「……っ!! こ、これは!?」
『切り札』の効果は絶大だった。店にミノタウロスが乱入してきてもナイフ研ぎを止めそうもなかったブーレイが慌てて姿勢を正し、テーブルに置かれた『切り札』、2本のワインボトルを食い入るように見ていた。
「幻のワインと言われてる『シャンセ・ロウトワール』……それが2本も、だと……」
「しかも、うち1本は最高傑作と名高い491年物です。私の家の地下倉庫で埃をかぶっていた物ですが、よろしければ差し上げますよ。もちろん、タダでというわけにはいきませんけどね」
「……ちっ、まぁいいだろう。話は聞いてやる。仕事を受けるかどうかはそれ次第だ。少しでも気に入らなければ即刻断るからな」
さも気乗りしなさそうに吐き捨てながら、男にテーブルの席をすすめるブーレイだったが、その視線はワインボトルに釘付けのままだ。
男はその反応に気をよくし、心の中で“形見屋”攻略法を教えてくれた知人に感謝しつつ、ブーレイの正面の席に腰を下ろした。
「それはもちろん。条件が気に入らなければ、断っていただいて結構です。ですが、きっと満足して頂けると思いますよ。なにせ、今回の依頼主はオランでも有数の貴族ですからね。破格の報酬をご用意できるかと」
「OK、わかった。悪いがこの話はなかったことにしてもらう。その2本のワインを持って俺の前からとっとと消えてくれ。そして、2度と目の前に現れるな」
訪れる沈黙。確かに断っていいとは言ったが、まさかこのタイミングで断られるとは夢にも思っておらず、男は次の言葉を用意するまでに数秒を要してしまった。

テーマ : 自作連載ファンタジー小説
ジャンル : 小説・文学

形見屋の事件簿

一方、無視された方の男は、ある程度予想はしていたとはいえ、こうも見事に無視されると本当に人違いなのかと一瞬不安になった。
「ブーレイさん……で間違いないですよね? 古代遺跡レックスで死んだ冒険者達の遺品回収を専門に行っている冒険者。パダの街を拠点にし、周りの者達からは“形見屋”の二つ名で呼ばれている腕利きの盗賊……」
念のため確認を取ろうとそう話しかけてみたものの、やはり返ってくるのはナイフの研磨音だけ。
事前に知人に教えてもらった“形見屋”の特徴的な容姿、すなわちこの見事なまでのスキンヘッドと、
『“形見屋”は基本的に警戒心が強いし、所見の相手からほいほい仕事を受けるような奴でもないから、話を聞いてもらうだけでも苦労すると思うぜ?』という忠告がなければ、人違いだと思いこんで帰っていたかもしれない。
(仕事を頼むどころか、話しかける段階でこれとは……先が思いやられますね。しかし、なんとしても仕事は引き受けてもらわないと……)
男はやれやれと溜め息をつきつつ、その知人が教えてくれた『“形見屋”に話を聞かせるための切り札』を懐から取り出し、テーブルに置くことにした。

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形見屋の事件簿

「あなたが“形見屋”……ブーレイさんですね?」
ナイフを研ぎつつも、背後から人が近づいてきている気配には気付いていたし、それが見慣れぬ男であることも、テーブルの上に置いておいた飲みかけのワイングラスの反射で確認済みだった。
ここで誰かと待ち合わせをする予定もなければ、男に声をかけられて喜ぶような趣味も持ち合わせていない。ましてや、今、自分はすこぶる機嫌が悪い。
男の問いかけを無視するには十分だな、と判断したブーレイは、そのまま黙々とナイフを研ぎ続けることにした。

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形見屋の事件簿

(携帯から更新できるかテストもかねて←まだ仕事中(ォィ))

その客は入り口に立ったまま店を見回し、誰かを捜しているように見えた。仕立ての良い外套をまとい立ち振る舞いにも育ちの良さが感じられ、おそらくそれなりに身分のある者だろうと店員はあたりをつけた。
店員は愛想の良い笑顔を浮かべながら、その客に近づいていった。この手の客は上手く立ち回れば店員の日給より多いチップを払ってくれたりする。
客から探している男の容姿を聞くと、すぐにそれと一致する人物に思い当たった。特徴的な容姿だったし、つい先ほどまでその男のことをことを考えていたところだったからだ。男のいる場所を客に教え、思惑通り日給とさほど変わらない額のチップを受け取ると、店員はさっきまでとっとと帰ってくれと思っていたその客に、よくぞ今までうちの店にいてくれたと感謝の念を送るのだった。

形見屋の事件簿

(前回の最終文変更)
男は無表情に、ただ黙々と手にしたナイフの手入れをしていたが、明らかに不機嫌そうな空気を周りに振りまいていた。

ナイフを磨くヤスリの音が、まるで砂漠の毒蛇がたてる警戒音の様にも聞こえ、そのピリピリとした雰囲気を察し誰も近寄ろうとはしなかった。店員ですら、注文されたワインを運んだ後は、一度もテーブルに立ち寄ってはいない。営業妨害だから早く帰ってくれ、と思っているほどだった。
やれやれ、と店員が溜め息をつき、ふと店の入り口の方を見ると、新しい客がちょうど入って来たところだった。

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三月兎

住人:三月兎
2人の子供の育児に追われつつ、なんとかゲームする時間を捻出する毎日。年金もらいつつ、朝から晩までゲーム三昧な老後をおくるのが夢。

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